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HOKUSAI―ぜんぶ、北斎のしわざでした。展
まだまだ収まりそうにない浮世絵ブーム。またまた面白そうな展覧会が始まりました。中央区京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで13日に開幕した「HOKUSAI―ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」です。
北斎といえば、通称 “大波”や “赤富士”で知られる『冨嶽三十六景』を思い浮かべるかもしれませんが、本展は今や世界を席巻する日本のエンターテインメント文化――「マンガ」や「アニメ」のルーツは北斎にあり!という切り口で、200年前に北斎が編み出した表現に着目。『冨嶽三十六景』の絵師とは異なる北斎がフューチャーされています。

展示は、第1章「読本」、第2章「波」、第3章「表現力」、第4章「北斎漫画」、第5章「色彩」、第6章「富嶽百景」の6章で構成され、質・量ともに世界一として知られる浦上コレ クションより選び抜かれた450点超を展示! 集中線・効果線、爆発や閃光、波や風などの自然現象、時間の経過、妖怪や幽霊、略画と一筆画、ギャグ描写、アニメ風原画など、現代マンガやアニメ的表現の原点を見ることができます。


出色は、北斎の画のアニメーション。アニメのことなど知る由もない北斎が、パラパラ漫画のような連続絵をすでに描いていて、それを日本屈指のアニメーターが繋げてみたらちゃんとアニメになった! 『踊独稽古』と『北斎漫画』の中の 「雀踊り」「武芸(棒術)」「無礼講」の4本が特設ミニシアタ=で上映されているのですが、一緒に踊りたくなるのは私だけではないはずです。
そして圧巻は、第6章 富嶽百景。北斎絵本の傑作『富嶽百景』全3編102図がすべて展示されています。『富嶽百景』は富士山の歴史や風俗、風景などをバラエティ豊かに描いている3編の絵本なのですが、よく102通りも描けたものだと感心します。しかもどれひとつとして似たものがない! 初編1ページ目に登場するのは、神話上の富士山の女神「木花開耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)」。ことほどさように必ずしも富士山が描かれているわけではありません。どこに富士山が描かれているのだろうと目を凝らしてみると、富士登山の人が被っている笠に「不二」の字が書かれていたり、手に持った盃の中にこっそり描かれていたり、網の裏に隠れていたり……。どうしても見つけられなかった富士もたくさんありました……。

驚くべき画力と発想力、ダイナミックな構図と超絶技巧で、見えないものさえも描き尽くした北斎。90年という長い生涯で30,000点もの作品を残し、93回も引越をし、30以上の画号を使い分けた自由奔放な生き様でも知られていますが、最後は自ら「画狂老人卍」と名乗りました。本当に絵を描くことにすべてを捧げた人と言っても過言ではないでしょう。
そうそう、「もし北斎が食堂を開いたら?」という視点から着想を得たテーマカフェ「北斎食堂」が同じフロアに展開されています。メニューは、波と富士を表現した蕎麦や青いオムライスなど。ちなみにお皿の模様も食べられます。

「HOKUSAI―ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」は11月30日(日)まで。
展覧会公式サイト:https://hokusai2025.jp
※作品はすべて浦上蒼穹堂蔵
今月の言葉
「たにん」なのか「ひと」なのか?他人ごと
おーどりー――ハチさんは、最近何か気になる言葉ありますか?
ハチ――た に ん ご と。
おーどりー――他人ごと?
ハチ――そう、「他人ごと」と書いて「ひとごと」と読むんだけどね。堂々と「たにんごと」と言う人が多くて…、ああ嘆かわしい。
おーどりー――パソコンで「たにんごと」と入力すると「他人ごと」と変換できてしまうのも問題あるね。
ハチ――うううっ、それは由々しき問題だ。
おーどりー――NHKでは、「自分に関係のないこと」などを意味する場合の言い方は「ひとごと」。表記は「ひと事」もしくは「ひとごと」だそう。
ハチ――「たにんごと」なんてーのは、もともと誤読なんだからさ、認めたらだめなんじゃないかなと思うんだけど。
おーどりー――その通りだと思うんだけど、ある辞書には「タニンゴトと文字読みすることも多い」と、半ば諦めムードなんですよ。
ハチ――やれやれですね。NHKは「たにんごと」という言い方は、放送で用いないということですよ。
おーどりー――一方で、「他人事」という表記も用いないと。もともと「人事(ひとごと)」が「人事(じんじ)」と区別できないので、「ひと」に「他人」をあてた「他人事」が支持されるようになったという背景があるらしい。
ハチ――え?てことは、「人事(ごと)」でも問題ないってこと?
おーどりー――ないといえば、ない。のかな?「他人」を「ひと」と読むのは常用漢字表にない読みだから、新聞は基本的に「ひとごと」を「人ごと」と表記するんだよね。
ハチ――そっか。でも私は「ひとごと」=「他人ごと」を支持していきたいです。
おーどりー――あたしも、「たにんごと」は認めたくない派です。で、「他人ごと」といえばですが、「ひとさま」についてはどう書くのが正しいのでしょうか?
ハチ――他人さま?
おーどりー――ところがどっこい。辞書は「人さま」なんですね。「他人さま」については、「他人さまとも書く」という、但し書き的な扱いなんです。
ハチ――そうなんだ。
おーどりー――ということは、「他人ごと」についても、あたしたちの絶対「人ごと」はおかしいっていう考え方も、おかしいってことかも。ここは柔軟に、「人ごと」でもOKくらいの気持ちでいないといけないかもしれないと。
ハチ――う~ん、それでも「他人ごと」表記にはこだわってしまう。

おーどりー――「人さま」の意味も、ある辞書では実に回りくどくて笑えるの(笑)。「自分(の家)とかかわりをもちたくない他人を、どこかでかかわりをもつものとして敬意を込めた称」と。わかりにくっ!
わたしたち日本人はほぼ全員、親に「人さまに迷惑をかけないように」と言われて育ってきましたよね。
ハチ――他人を敬って言う語、くらいでいいのにね。でも、まあ「人」は「他人」を意味する言葉でもあるわけだからね。
おーどりー――そうね。言葉自体も生きているから、死んでいくものもあれば、新たに生まれてくるものもある。そして、進化していくものもあるからね。
ハチ――私たちも、フレキシブルに。そして進化しなければいけない。
他人ごと:自分には関係のない事。他人に関する事。
(大辞林第4版)
人様:他人の尊敬語(他人様とも書く)
(大辞林第4版)
