うどんの“こ” =茄子

田舎に住んでいた子供の頃。夏から秋にかけての夕方、祖父はよく畑から採ってきたばかりの茄子を井戸水でザッと洗い、味噌を付けて、実に美味しそうに食べていた。私もタイミングが合えば、お相伴にあずかることができた。生で食べるのはちょっと若い茄子で、皮は柔らかく、えぐみもなく、しっとりした感じがたまらなかった。

そういえば、最も頻繁に食卓にのぼった茄子料理を忘れていた! 調理というほどのものではなく、4等分くらいに切ってただ茹でただけの茄子。うどんの“こ”として、夕食にたびたび登場した。“こ”というのは、ねぎや茗荷、紫蘇などの薬味とは別扱いで、うまく説明できないのだが、うどんのおかず的な存在? 天ぷらやきんぴらなども“こ”の範疇に入っていたような気もするが、我が家ではほうれん草や白菜など茹でた野菜が多かったように思う。そして、私にとって“こ”といえば、茹でた茄子だった! 

「“こ”がねー、“こ”がねー(“こ”がない)」と、うどんの日には必ず言っていた祖父のことを、久しぶりに思い出した。