月刊いぬごや新聞11月号

知ってほしいの、東京の農業 5

買えたらラッキー♪ 五十嵐農園の生落花生!

今年も堪能しましたっ! 五十嵐農園の「生落花生」。あえて”生”といったのは、落花生といえば、乾燥させたものと思っていたからだ。もっと言えば、落花生とピーナッツが同じものという認識すらなかった。

そんなハチが生の落花生があることを知ったのは、公益財団法人東京都農林水産振興財団が発行した「るるぶ特別編集 東京の農林水産業」がきっかけだ。東京都農林水産部に10年近く働きかけて実現した企画で、その中に「買えたらラッキー♪ レア物大集合」というコーナーがあり、その一つとして五十嵐農園の生落花生を取材したのだ。2016年のことなので、かれこれ10年近く楽しんでいることになる。

さて、その落花生を栽培しているのは、練馬区で代々続く五十嵐農園の7代目、五十嵐靖弘さんだ。

「私は姉一人、弟二人の四人姉弟、子どもの頃から農家を継ぐものと思っていました。大学を卒業後、不動産関係の仕事に就いていたのですが、祖父が体調を崩したため、予定よりも早く農業に就くことになりました。当時はキャベツがメインで、キャベツ栽培は力仕事なため、父親だけでは手が足りなかったんですよ」

と、五十嵐さん。畑を手伝うようになったものの、キャベツは市場出荷の値段が安定せず、安い時は一箱50円とか100円……。ダンボール代にもならないこともあったという。

五十嵐さんの落花生栽培は、練馬区と板橋区の農業後継者で構成される「樹(みき)の会」に参加したことら始まる。樹の会とは、30代から40代を中心とする若手農業者の集まりで、野菜から園芸まで様々な農産物を栽培しており、会員自らが自由に研究したり、意見交換をする場。そこで、東京都中央農業改良普及センターの職員から落花生の「おおまさり」を勧められたのだ。

「おおまさり」は、千葉県が品種改良して誕生した、通常より約2倍粒が大きい落花生。名前の通り「大きさや味が勝る」のが特徴で、塩茹でにして食べるのが定番だ。旬は9月中旬から10月末頃。この時期になるとハチは仲間を募り、五十嵐さんに「おおまさり」を注文するのが恒例になっている。

取材に行ったのは9月中旬。「今年はめちゃきちゃ豊作で、採っても採っても全然減らない」と笑った

五十嵐さんは、朝収穫した落花生をきれいに洗い、表面の水分が飛んだところでネットの袋に詰め、吸湿性と通気性に富んだ更紙で丁寧に梱包して発送する。生落花生は非常に傷みやすいため、紙の詰め方にも工夫が必要なのだという。届いた段ボール箱を開けると、もわっと落花生と土の香り。ああ、これこれ! さっそく塩茹で開始。甘くて、柔らかくて、それでいてホクホク! 茹で具合を見ている時点でもう止まらない。これぞ、「買えたらラッキー♪ レア物」なのだ。

段ボール箱を開けると、落花生の香りと土の香りが立ち上る

ちなみに、「買えたらラッキー♪」といわれる所以は、畑の前の庭先直売所に朝並べると、昼前には売り切れてしまうから。当然ながら、取り寄せよりも鮮度抜群! 土支田一丁目バス停近くなので、足を運んでみる価値あり!ですよ。

次回は、「おおまさり」だけではない野菜栽培のことや、東京で農業を続けることについて紹介します。

オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語

 芸術の秋です。都内の美術館ではこの季節に開幕を迎えた展覧会がたくさん開催されていますが、国立西洋美術館の「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」は、何というか王道中の王道の展覧会です。

 何しろ、展示されるのはフランスのオルセー美術館の所蔵の作品が中心だし、しかもそれが約70点という規模だし、みんなが大好き印象派だし、モネとかルノワールとか、マネとかドガとか、誰もが名前くらいは知っている巨匠の作品ばかりだし、「あぁ、展覧会でいい絵をたくさん観てきたぞ~。満足、満足!」となる展覧会なんです、まじで。

 印象派といえば、風景画をすぐに思い出します。大雑把にいえば、自然のなかの光の効果を表現しようとしたんですね。でも、「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」は、「室内」をテーマにした展覧会です。印象派の画家たちによる肖像画や、日々の情景を描いた絵、室内と戸外の「あわい(内と外をつなぐ場)」を舞台にした絵、室内装飾などが展示されていて、おーどりーが勝手に思っていた印象派イコール風景画というイメージが、誤りだったと気づきました。室内でも、光の効果はあるわけですから、それはそうですね。ちなみに、バレエダンサーの絵がよく知られているエドガー・ドガにいたっては、戸外制作を疎んじてたそうです。

そのドガによる《家族の肖像(ベレッリ家)》は、この度の修復が上手くいき日本に初上陸しました。4人家族の個々の性格ばかりか、心理的関係までもが表されている若き日のドガによる傑作です。まあ、おーどりーは「そういわれれば、そうかも」くらいにしかわからなかったのですが、実物を見てみると描かれたドガの叔母の表情があまりにも能面だったので、ちょっと納得しました。

エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》
無表情…のお手本のような顔です、おばさま。怖いです

個人的には、子供たちの表情がかわいかったアルベール・ベルナールの《ある家族》、ちょっとヘンタイ風味が入っていて妄想が膨らんだドガの《足治療師》が気になりました。

で、おもしろかったのが、ジャポニスムが印象派に影響を与え、日本の美術や意匠を参照してつくられた陶磁器やガラス製品など。「あ、コレ北斎じゃね?」みたいなお皿もありました。決してパクリではありません、オマージュです。

アルベール・バルトロメの《温室の中で》という絵があります。彼の妻が温室にいるところを描いた絵なのですが、そのとき着ていたドレスが絵の隣に展示されていました。1880年のドレスです。何より、ウエストが細すぎてのけぞりました。もちろんコルセットでギューギューに締めて着る前提のドレスなんですが、あまりにも細すぎる。あの時代の人は、よく我慢できましたね。そう思うと、そんなドレスから女性を解放したシャネル(だったかな?)は、やはり素晴らしいです。

アルベール・バルトロメの《温室の中で》
この隣に本物のドレスが展示されている。ウエスト細っ!

そして最後には、国立西洋美術館が所有するご存じモネの《睡蓮》が、ドーーーン!!!

これは、実業家の松方幸次郎がモネから直接購入したものとしても知られています。実はここだけの話、おーどりーには《睡蓮》のよさが、よくわかりません。すんません。

でも展覧会は超おすすめです。2026年2月15日までやってます。

日本人のマダム御用達ドイツのブランド、フェイラーのハンカチ。ルノワールの絵と愛称がいいような気がします(ドイツに行ったとき、ドイツ人はこんな高いハンカチは買わないと言われたことが印象に残っています)

公式サイト:https://www.orsay2025.jp

今月の言葉

猟師が鉄砲で撃つわけじゃない「飛ぶ鳥を落とす勢い」

ハチ――この前、ラジオを聴いていたらアナウンサーが変なこと言ったの。

おーどりー――なに、何?

ハチ――「飛ぶ鳥を撃ち落とす勢い」って。

おーどりー――ん?

ハチ――飛ぶ鳥を、撃・ち・落・と・す・勢い!

おーどりー――あ、一瞬何が間違ってるのかわからなかった(笑)

ハチ――撃ち落としちゃダメでしょう?

おーどりー――確かに、でも、飛んでる鳥を撃ち落とすのはある意味すご~い!

腕のいい猟師か、ゴルゴ13か、みたいな(笑)

ハチ――そうなんだけど(笑)。これって、普通に「ぴ~ひょろ~」とかって呑気に空を飛んでいる鳥も、その勢いに圧倒されて落っこちてしまうくらい、権力や威勢が盛んなようすを表わしている言葉なのよね。鳥は自然に落ちてこなきゃいけないわけで、撃ち落としちゃいかんのよ。

おーどりー――まぁ、現実的にはパワーというか勢いで鳥が落っこちてくることはないから、鉄砲や弓矢、あるいはパチンコ(スリングショット)的なものを使って落とすわけだけどさ。そのアナウンサーは、鳥は撃たなきゃ落ちてこないから、「撃ち落とす勢い」で覚えていたのか…?

ハチ――アナウンサーだから、聞き取りやすい声とか、滑舌がいいとか、アクセント・イントネーションを正しくとかテクニック的なことも重要だけど、言葉にも人一倍気を付けないといけないと思うんだけどね。

おーどりー――最近は、スマホでなんでも調べられるじゃない? でもネット情報って、すべてを信じちゃうと危ないよね。言葉に関していえば、誤用なんかどんどん出てくる。それを正しいと信じて使っている人もいるからね~。つまりネットの情報は玉石混交。嘘や間違ったことも、しれーっと存在してるから、それを見極める能力も必要なのかも。てか、国語の勉強大事!

ハチ――まあ、私もネットで調べちゃうけど。ちゃんと辞書を引きましょう! 引くったて、辞書にひもを付けて引っ張ることじゃないですよー。ちなみに玉石混交は、玉(宝石)と石(石ころ)が混じり合っているという意味から、良いものと悪いものが混ざっていること。混ざっているからといって「混合」ではないのでここも要注意ですね。

おーどりー――ニホンゴ、ムズカシイ、デスネ(汗)

飛ぶ鳥を落とす勢い

意味:権勢が盛んであることのたとえ

(大辞林第四版)